■真由美の音楽修行
初級 12
中級 1234

 初級編 その1
          

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初めての方でも、10日間で立派なハードロック・プログレロックの愛好家になれるように1970年代から課題曲を選んでみました。初級の後には、中級編も用意されています。


  Lesson 1:  大音量に耳を慣らす。

   課題曲  《 LED ZEPPELIN II 》

一人暮らしの人は、戸締まりを厳重にして、家族のいる人は日曜日の早朝は避けること。ヘッドホンがあればいつでもいいが、とにかく音量を少しづつ上げていく。始めは騒がしいと思っても忍耐強く、ロバート・プラントの絶叫が快く聞こえるまで、何度も課題曲を聞くこと。いちど頭の奥まで音楽が抜けると、後は至福のときが訪れる。



  Lesson 2:  お気に入りのギタリストを見つける。

   課題曲  《 LED ZEPPELIN III 》

ハードロックの愉しみの一つはギターのうまさにむせび泣くこと。たとえ自分では弾けなくても名演奏はわかるでしょう。これを聞いて自然に泣けるようになるまで、繰返し聞いてください。いつの時代にも三大ギタリストなどという区分があるが、要は自分のお気に入りを作って応援すればいい。70年代を代表するギタリストは何人もいるが、わたしのお薦めはやはりジミ−・ペイジ。この人のポスターは今でも目の前に張ってあるが、彼ほどの美青年はその後も出ておりません。元ストーンズのミック・テイラーもハンサム・ボーイでしたね。


   課題曲  《 JEFF BECK GROUP 》

R&Bがお好きな方にお薦めの課題曲です。ジェフ・べックの魅了を余すところなく表現した作品。彼のギターテクニックを真似ようと フェンダーギターを買いに行く人も多いが、ここは初級なので、まず課題曲をじっくりと聞き込んで、いっしょに踊り出すくらいにとどめてください。



  Lesson 3:  英語の歌詞を読んでみよう。

   課題曲  《 EMERSON LAKE & PALMER 》

英語力といっても中学を卒業していれば十分。今後ブリティシュ・ロックをきわめようとお考えのあなたは、この際、英語の辞書を用意しましょう。英検一級をお持ちの方は英英辞書を使ってください。初級ではやさしい英語の歌詞から始めます。いきなりホテル・カリフォルニアには進まないこと。課題曲はプログレの入門でもあるEL&Pのファースト・アルバム。TAKE A PEBBLE (石をとれ) をまず訳してみましょう。

Just take a pebble
And cast it to the sea
Then watch the ripples
That unfold into me

pebble: n. a small, rounded stone, esp. one worn by the action of water.
cast: v.t. to throw or hurl
ripple: v.i. to form small waves
unfold: v.t. to lay open to view, reveal, spread out, develop


   課題曲  《 KING CRIMSON 》

もうひとつ課題曲を訳してみましょう。70年2月に、あのアビーロードを抜いて第一位になった[キングクリムゾンの宮殿]から[EPITAPH (墓碑銘)]を選んでみました。辞書を片手にロックを聞くというのは、英語力もつくという実益があります。こうやってじっくりと歌詞を見ていますと、いたる所に韻を踏んでいるのがわかります。これがネイティブの人たちには心地よく聞こえるのでしょう。音楽的にも詩的にも優れたこのアルバムは、プログレの古典的入門書ですから、ぜひ、繰返し聞いてメロディを覚えてしまいましょう。

The wall on which the prophets wrote
Is cracking at the seams.
Upon the instruments of death
The sunlight brightly gleams
When every man is torn apart
With nightmares and with dreams
Will no one lay the laurel wreath
As silence drowns the screams.

prophet: n. a person who foretells the future.
crack: v.t. to break without separation of parts
seam: n. a line formed by edges
instrument: n. a mechanical tool
gleam: n. a flash or beam of light
torn: v. pp. of tear
nightmare: n. horrible dream
laurel: n. a small European evergreen tree with dark, glossy leaves
wreath: n. a circular band, as of flowers
drown: vt. die, cause to die; vi. prevent a sound from being heard
scream: n. a loud, sharp cry or sound



  Lesson 4:  ヴォ−カルを聞きくらべる。

   課題曲  《 FRAGILE 》
もうどんな大音響がきても大丈夫ですね。ハードロックはひと休みして、このあたりでいろいろなヴォ−カルを聞き比べて、自分はどのような方向に進むべきかの指針を見つけてください。このアルバムには三人のヴォ−カリストが登場しますが、さて、ジョン・アンダーソンはどこに出てくるでしょうか。どのパートをソロで歌うか、じっくりと何度も聞き込んでください。ジョン・アンダーソンの声がわかるようになったら、YES の曲を聞くのが愉しみになります。リック・ウエイクマンのピアノも素敵ですから、彼のキーボードの癖もしっかりと覚えてください。

   課題曲  《 EVERY PICTURE TELLS A STORY 》
ロッド・スチュワートの声は一度聞いたら、忘れられないはずです。いろいろと浮き名を流した、男の色気を感じとってください。このあたりが趣味の問題になってくると思います。好き嫌いは別として、このアルバムは基本中の基本なので、初級の方は一通り聞くのが必修。特にMaggie May はチェックすること。

   課題曲  《 ZIGGY STARDUST 》
デビッド・ボウイはご存じですか。70年のロックを語る上で、押えておきたいアーティストです。72年当時、日本ではT. Rex とともにグラム・ロックなどと紹介されていました。彼の切ない叫び声を聞いていると、その後の活躍を予想させるような、きらきらした星くずが散らばって来ます。若いときのボウイをぜひ体験してみましょう。一つのアルバムを何度も聞き込むと、映画のように一つの場面 があらわれてくるものです。ラスベガスに、Stardust というホテルがあって、そこで会議をしたとき、この曲が頭の中でぐるぐる回って困りました。



  Lesson 5:  ライブ盤を楽しむ。


   課題曲  DEEP PURPLE LIVE IN JAPAN
少し慣れたら、すぐにでもコンサートに出かけたいところです。ただ70年代のコンサートに行くには、タイムマシンを調達しなければいけません。そこで、居ながらにして、コンサートの模様が味わえるとっておきのアルバムをご紹介しましょう。これを聞いたら、もう二度とスタジオ録音盤は聞けなくなります。1972年の日本公演、絶頂期のディープ・パープルがあなたの耳もとで演奏してくれます。ただし、初級の方に注意して欲しいことは、音量 。戸締まりをしっかりしたら、ガラス窓がビシバシ震えるくらいの迫力で HIGHTWAY STAR を聞いてみましょう。SMOKE ON THE WATER の前のイアン・ギランの語りも見逃がさないでください。ハードロックを愉しむには、それなりの覚悟が必要です。


   課題曲  《 EMERSON, LAKE & PALMER 》
1997年に発売されたEL&Pのアルバムですが、中身は74年のオクラホマ、77年のウエストバージニアでのライブ盤。プログレの頂点を極めたEL&Pの素顔が迫ってきます。これも大音響で、ぜひ楽しんでください。キース・エマ−ソンのピアノが耳に突き刺さってくるほど、聞き込みましょう。グレック・レイクのラッキーマンに、涙を流すようになれば合格です。74年のロンドン・ウエンバリ−公演では、三日間のチケットがすべて売切れという超人気だったにもかかわらず、ロンドン音楽関係者のコメントは、ナイフをピアノに刺したとか、ステージで過激なアクションをしたとかの、型どおりの報道しかなく、彼らの音楽的価値を高く評価してくれたのはアメリカでした。そういうことを理解しながら、こののびのびしたアメリカ公演のライブを楽しんでください。


   課題曲   《 BBC SESSION 》
同じく1997年に発売されたLED ZEPPELINのアルバム。幻の録音といわれた69年と71年のライブ盤。スタジオ盤はどれも美しく完成されているが、この中身の濃さはなんといって表現したらいいだろうか。たぶん、初級者で、まだツェッペリンに毒されていない人は倒れてしまうのではないかと、心配するくらいテンションの高い曲が続く。体の弱っている人、妊婦の方はご遠慮ください。それ以外の人も、この二枚組を聞くときは、十分に睡眠を取って、食事もすませた後、ロバート・プラントの発射するビーム光線と闘ってください。ハードロックはアーティストと受け手がたがいに火を吹き合うようなもので、激しさは恋愛に似ています。そういう意味でも、子供にはこの曲は難解すぎる。



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