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十二月の恐るべき子供たちへ 

Part 2


 私が Rock やっているというと、みなさん驚かれます。かみさんも子どももいるし、どこから見ても真面目な会社員ですから。髪も短いし、ダークスーツがよく似合うと自負しています。 会社には、自分用の急須と茶筒が置いてあって、毎朝自分でお茶を入れて飲んでいます。朝、早めに出勤して、新聞に目を通しながら、一杯のお茶を飲む。これがないとどうも一日の始まりのけじめがつかなくて、いけません。 

 でも、ほんとうは仕事よりも、ストーンズに命捧げているんです。独身時代のことですが、アメリカまで公演の追っ掛けもやりました。 子どもの名前を付けるときも、女房と一悶着あって、御津久(みっく)も美留(びる)も樹位澄(きーす)も全部だめ、仕方なく、三津子と名付けました。 こればっかりは、お腹を痛めて生んだ方が強いですからねえ。でも、普段は亭主関白で、威張っています。

 わたしがまだ小学校に通っていた頃、ストーンズの日本公演の話がありました。なんでも有名な金権政治家が関係していて、一時中止の話が出たとき "よろこべ、ミックジャガーという者以外は全員来日できるぞ、グループの一人くらいなくても演奏はできるだろう" と語って全国のストーンズ・ファンの失笑をかったという話は知っていますよ。昔はいろんな政治家がいたのですね。もっとも、政治家はいない、あれは政治屋だという声もありますが。

 会社までは車で通勤していますが、MD繋いで、もちろんストーンズです。これを聞きながら、つい信号無視、なんてことはありませんが、曲の終わるまで駐車場で止ってじっと聴いていたことは何度もあります。 

 年に何回か狂ったようにギターを振り回して演奏するんですが、これが快感。考えるだけでぞくぞくするほど嬉しい。公演前なんて、平均睡眠時間四時間で、会社で仕事しながら曲のことばかり考えている。 あれが本当の自分で、会社に座っているのは別の自分で、まあ、こっちがなんとか仕事しているので、本当の自分が道楽できるというわけ。なんか、ややっこしい話になってしまいましたね。

 要するに、カミサン美人で、娘が可愛きゃ文句ないというわけなんだが、私には、もうひとつあるんです。それは、ストーンズが毎年新譜を一枚づつ出すこと。 こちらが真面目に働いている分だけ、むこうにも頑張って貰わないといけない。勝手に解散などしないように、毎日神棚に手を合わせています。

 最近、また道楽がひとつ増えまして、リアル・オーディオなんてものにすっかりはまっています。これが、始めるとどんどんイメージが涌いて、自分が天才モーツアルトか、はたまた、滝廉太郎かと思える程、曲に幅が出て、いくつでも曲が作れるような気がする。自分の才能がおそろしいなんてね。

 本日は、わたしのために、盛大なお誕生パーティを開催いただき、まことにありがとうございます。ごあいさつが長くなりましたが、ここで乾杯をお願いします。


ところで、この支払い、ほんとうに UBIK FACTORY に付けていいんでしょうねえ、たしかにわたしはあそこの音楽担当役員なんですが、ここにサインすればいいんですね。

 

1997.12.7


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