夢八夜
《ぼくの出した手紙は受け取ったと思う。返事を待って、毎日苛々して過ごしていたよ。きみの心は決まったの。今、とてもきみに会いたい。お母さんの具合はどうなの。こちらの手が離せるんだったら、すぐにでも飛んでいくよ。》
あなたはわたしを見つめ、それから何度も何度も同じように語るのでした。あなたが、懐かしそうにしみじみと語るのですが、それはわたしには何の共感も持てません。なぜなら、あなたを少しも愛していないことをよく知っていたからです。
お酒を飲むと、ふしぎなことにだれかに甘えたくなる。ずっと寄りかかっていたような、そんな気分。でも、わたしは恋愛を信じません。それは不滅ではないから。わたしが信じるのは友情、もう少し厳密にいうと、友情に混ざった少しの愛なのです。あなたと話していたら、これまでの愛にまつわるすべてを思い出しました。あなたのおかげで、男の子がどんなふうに心を砕くのか、そして、どこまで優しくなれるのか。わたしたちの始まりは友情でした。その過程であなたは、少しづつ変わっていくようです。七色の虹のように、薄くなり、濃くなり、あなたは変わってしまった。以前には、こんなこと考えもしませんでしたから。今夜もまた、眠れそうにもありません。愛をあなた流の観念として捕らえようとするから、現実との落差に埋もれてしまうのです。
《彼女は行ってしまう。明日になれば、行ってしまう。
ぼくは何をしただろうか。傷つけることを言っただろうか。
彼女はもう笑わない。別の話をするだけだ。
ぼくは何をしただろうか。怒らせることを言っただろうか。》