KING CRIMSON  [In the Wake of Poseidon]

クリムゾンの難解さは、それが好きか嫌いかで人生まで違ってしまうような気がする。おおげさな言い方だが、クリムゾンのアルバムに没頭できる人は幸せである。決して癒しの曲ではない。そんなときは、近づかない方が懸命だ。命がけで、このまま朝まで起きていようという気分のときに、たっぷり聴くといい。わたしはいつもどこかで泣いてしまう。ずっと遠い昔のできごとが甦ってくるのだ。だれでも心の中に封印した思い出があると思うが、それを鮮やかに切り取られて呆然とする。彼らは泣かせどころを心得ているのだと思う。油断すると泣きをみるから、覚悟なしに聴いてはいけない。名曲といわれるものは、少し分裂気味の傾向があるが、これはまさにその典型。初めて聴いた人には、なんてこんなに飛んでいくのかなかなか理解できないだろう。それが慣れると心地よくなるから怖い。できるなら詩を見ながら聴いてみよう。


KING CRIMSON  [ISLANDS]

キング・クリムゾンといえば、70年代当時から難解な曲づくりで定評があった。メンバのひとりが精神病院に入ったとか、ひんぱんなメンバ・チェンジがあったりして、話題にもことかかなかった。その音楽性については、これまた、さまざまな捉え方をされている。このアイランドという曲は、それほど評価されていないようだが、個人的にはすごく聞き込んだ馴染みのあるアルバム。ジャズっぽい要素と、プログレ・ロックが混ざっていて、それはまさに聖と俗を合わせ持つ、レオナルド・ダ・ヴィンチのフレスコ画を見ているような気がする。グレック・レイクはいなくなったが、このボーカルの澄んだ歌声に心を打たれて、また繰り返し始めから聞きたくなる。全編を流れるサックスの音色が、人生の哀しさを歌っているようだ。


KING CRIMSON  [In the Court of the Crimson King]

初めて聴いたのは、高校生のとき。レコード屋さんのお兄さんに、ぼくの趣味になってしまうけれどと、薦められたのがきっかけだった。宮殿で聴いたグレック・レイクの澄んだ歌声、それが聴きたくてELPのファンになる。わたしにとって、プログレの入門となった貴重アルバム。

LPレコードをきかなくなって、70年代の音楽から遠離っていた時期がある。そのときも三枚だけもっていたCDが宮殿、ELPファースト、そして展覧会の絵だった。いまでも、休日の朝、これをかけてグレックといっしょに歌っている。こころが浄化されるような気分。